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東西豪農の明治維新―神奈川の左七郎と山口の勇蔵 (塙選書)
 
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東西豪農の明治維新―神奈川の左七郎と山口の勇蔵 (塙選書) [単行本]

渡辺 尚志
5つ星のうち 3.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

洋学に関心をもって、「横文字早まなび」「西洋事情」などの書籍を読み、養蚕業を積極的に導入、自由民権運動にも目を向けた神奈川の山口左七郎。奇兵隊への資金援助などの功績を、河川改修の援助をうけるために、井上馨や山県有朋らに強調、毛利家の歴史編纂にも従事した山口の林勇蔵。地域社会のなかで、明治政府と一般民衆とを結びつけた、二人の中間層(豪農・地方名望家・地域指導者)に着目し、転換期の社会を、上から下まで、国家から一般民衆までを、総体的に把握する。

内容(「MARC」データベースより)

明治維新ののち、地域の発展・安定のために奮闘した、神奈川の山口左七郎と山口の林勇蔵。地域社会の中で、明治政府と一般民衆とを結びつけた2人に着目し、転換期の社会を総体的に把握する。

登録情報

  • 単行本: 201ページ
  • 出版社: 塙書房 (2009/03)
  • ISBN-10: 4827331073
  • ISBN-13: 978-4827331073
  • 発売日: 2009/03
  • 商品の寸法: 18.2 x 13.2 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
 豪農という書名のものを読むのは、伝田功の教育社新
書(1979)以来です。この間、この分野の研究も大分様変
わりしたようです。確かに、本書終章にあるよう牧原憲夫
『民法と憲法』(2006 岩波新書)は、自由民権運動を明治
政府、そして民衆の三極対立のものとしていました。これ
を読んだときは、それ以上のことは考えませんでしたが、
今回、新井勝紘編『自由民権と近代社会』(2004)を読ん
で、その背景がよくわかりました。すなわち、民権運動を
現在の市民運動の先駆としてのみみるのではなく、より
客観的な視点から、言葉を換えるとより学問的な立場か
らふり返るという方向に転換していたのです。
 そういう視点からみると、本書で紹介されている東西ふ
たりの豪農のうち、品川弥次郎や山県有朋に維新時の
貢献を理由にして治水工事の国庫補助を迫った林勇蔵
の行動は興味深いものがあります。また、相模国の豪
農山口左七郎の評価に際し、近世・近代を通じる近代転
換期としての19世紀論の必要性が提起されているのも、
大いに肯けるものでした。
 ともあれ、いくつかの研究書から主要論文を抜き刷り
する本書のようなスタイルは、門外の市民が直近の研究
動向を伺うには有用な方法だと思います。これからも進
めてほしいと思います。

〔付記〕 稲田雅洋『自由民権運動の系譜』(吉川弘文館
2009)を読みました。言論活動(新聞・演説)に着目し、民
選議院開設運動から初期議会の動向、そして大正期の
吉野作造の活動までを跡づけたもので、ひとつの試みと
して学ぶところが多々ありました。しかし、今求められて
いるのは、それらと秩父事件などの激化事件とを同時に
捉え得る複眼的な視座なのだとわたしは思います。
(2009/10)
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形式:単行本
 どこまでの機関を明治維新と呼ぶのかよく分からないが、本書が取り扱っているのは明治10年代周辺だ。旗本を領主に持っていた地域の豪農・山口左七郎と、長州毛利家藩士の知行地の豪農・林勇蔵の当時の行動の記録を洗うことにより、地域特性や考え方が明治維新に対する行動に影響したのかを明らかにしている。
 基本的には、個人の記録を積み上げ、特性によりグループ化し、そこから分析をしようというスタンスらしい。

 一言でいうと、明治政府下にあって彼ら豪農は、中央政府と民衆の間にある緩衝材の機能を果たしたらしい。近代的な明文法による統治を推し進めていく政府と、封建的な慣習により集落を形作っている農民たち。前者の目的を実現するために、後者の意を汲みながら彼らが納得できる形に実現して行ったのが、山口左七郎のような豪農たちだという。
 左七郎は、自分たちが前時代的な考え方と近代的な考え方の間にいることを自覚しており、より前時代的な考え方に近い庶民たちには、近代的な考え方を押し付けても対応できないことを理解していた。ゆえに、目的は達成するけれども、その実現方法は前時代的な考え方に沿った方法で実現するという、見えない苦労を積み重ねていったのだ。

 もちろん彼の様な理解のある豪農ばかりではなく、近代的な契約をたてに取り、相手の状況を鑑みない借金返済を迫る豪農たちもいた。彼らからすれば、それが新しい社会のルールなので、それを適応することに何ら呵責はないわけである。
 このような豪農たちが自由民権運動の中心にいたため、実は彼らと庶民の間の距離はかなりあった。もちろん、政府との距離はもっとあった。いわば三竦みの状態だ。その間を、左七郎のような人間が取り持っていたのだろう。

 一方、官軍に属していた豪農たちは、逆に自由民権運動を嫌っていたらしい。なぜなら彼らは、政府中枢との太いパイプを持っていたからだ。彼らは、動乱時の貢献を前面に押し出して、その褒美として、維新後の村落運営に便宜を図ってもらえるように陳情していく。このようなやり方が可能なことが、賊軍に属していた豪農とは違うわけだ。
 正しいルートで県から国へ陳情しても大概は却下される。だから裏ルートから権力者へのパイプを維持して陳情を通してもらえるようにする。これはまさに、現在にも脈々と続く方法ではないだろうか?

 実は、この頃の彼らのやり方が、現在の政治の雛形になっているとしたら、なかなか面白いとは思う。

 ひとつ本書に苦言を呈するならば、例えば左七郎の提案が県にどの様に扱われたのか、結果までも記してもらえれば、彼らの考え方が一般的であったか否かの検証が出来て、より良かったとは思う。
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