桶谷秀昭「天心・鑑三・荷風」及び竹内好「日本のアジア主義」からの流れでこの著書を取った。アジアの中の二大文明であるインドと中国の思想や美術を「理想」として紹介し、その精華を保存している日本の美術を通して日本の理想、そして東洋の理想を詩的に語るという趣向の文章になっている。もともとは英文で書かれた文章で、最後に一行で(富原芳彰訳)と書いてあるのが少し不思議な感じだ。
読んでいくと、ここでつけられているのがいつごろの訳なのかわからないが、前に読んだ保田與重郎の文体に良く似ているのに気づいた。特に十一の足利時代は、日本浪漫派の著作に入っていても違和感が無いぐらいだ。内容も、著者本人が心を籠めてアジアの連帯を信じて論じているのはよくわかるが、他の論者に利用される隙が十分にある主張のように見える。主張する当事者自身の意見と行動をつなぐ実践的な倫理が生きていなければ簡単に膨張主義者の方便に堕してしまう危なっかしさがある。岡倉天心自身は日本国内では思想的な徒党を組まず、全く孤立した中でここにあるような思索を練っていたようで、やはり不思議な人物だ。
東洋美術紹介としても、一風変わったエッセイとしても、アジア主義や日本浪漫派関連の文献としても読んでみて面白いのでは。