大勝軒といえば、全国に弟子の店が広がっているというイメージがあるが、開店当初は弟子をとらない主義の店であったという。それが、なぜ弟子をとるようになったのか、また、なぜ4時間だけの営業なのかなど、店とオヤジさんの関係がつぶさに分かってくるにつれ、オヤジさんの一本気な情熱についつい引き込まれる内容になっている。
本書では、一時期閉店していた店が再開したのも現在のにぎわいが保たれているのも、すべてお客様に恵まれていたからという感謝の念が、何度も強調されている。苦情の電話であっても、それはお客様の声である以上、オヤジさんは、夜中であろうと何であろうと必ず自分が出て対応しているという。昨今のラーメンブームのなか、近寄りがたい雰囲気を売りとしている店もあるが、それらとは一線を画したオヤジさんの方針を読んでいくと、“愚直”なほどの誠意が、結局は成功のかぎなのだと理解できる。殺伐とした世のなか、正直に、まっすぐにラーメン道をひた走ってきたオヤジさんの著に、元気づけられる読者も多いに違いない。
ちなみに、本書へ推薦の言葉を寄せているキヤノンの御手洗冨士夫社長は、オヤジさんが中野の大勝軒で働いていたころの常連であったという。本書にも40年の時を経て再び大勝軒を訪れた御手洗社長との再開のエピソードがつづられているが、大会社の社長だからというのではなく、「40年間大勝軒の味を覚えていてくれたお客様のひとり」として感謝の念を贈っているところに、オヤジさんらしい実直さが感じられる。(朝倉真弓)
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