二十代初めまで、通算五年ほど、切手収集に凝っていたことがある。
まだその頃、東ヨーロッパの国々は、共産党政権が崩壊したばかりで、自由貿易や民主化という新たな荒波をかぶっていた。
今は知らないが、共産国の切手は大して高くなかった。でもって、西側の切手と比べると、圧倒的に紙質の劣るものだった。ツルツル・つやつやのグラビア印刷もあるにはあったが、旧チェコスロヴァキア切手に見られるような、手彫りの凸版印刷というイメージが強い。
だが、つるんつるんの規格品に見慣れた目には、原画作者の技を見せつけられるような、ザラザラの凸版の味が新鮮だった。国名レタリングすら、手書き原画なのである。
ピエブックスの、「かわいいデザインたち」シリーズを手にして早三冊目。西欧、北欧と違い、あの、昔の絵本のような、ザラザラの温もりがある東欧雑貨の世界である。つるつるの規格品ですら、印刷ずれがあり、キャラクターデザインは総じてあか抜けず、はっきりいってゆるい。だがそこが味なのである。ボタンも何だか手作りっぽい。クロスの刺繍も大量生産したのかしてないのか、ちくちく縫ったのか不明。
どれもこれもみんな同じ顔をしているスーパーの品物とはひと味もふた味も違う。
映画ポスターのイラストの、質の高いこと。手作り感満載で、皮肉もきいてて、だささが新しいというか。
旧共産圏の品物は、国の規格どおりで味も素っ気もないというイメージが強いけれど、民族の違い、はちゃんとあるんですね。