著者の著作の魅力は、当時の権力者から末端の関係者までを含む膨大な
当事者達の「声」をベースにして、いかに歴史の実相を描き出すかにあ
ると思います。
単純な指導者批判や讃美、あるいは現在の基準で大上段に過去を総括し
て裁くようなことは注意深くさけられています(ところどころ個人的な
思いがあふれる箇所もありますが・・・)。
冷静に今に歴史を教訓として生かすために、東條英機の苦悩に迫ること
で彼を指導者としてかかえることになった日本の政治的、組織的、精神
的背景や状況が、証言やメモを確認しながら掘り起こされ考察されてゆ
きます。東條自身の苦悩がひしひしと伝わる名著です。
公や組織の中で状況と相対する形でしか個人にとっての歴史が現前する
場はないというごく当たり前の原則をふまえ、できる限りその状況に迫
ろうとする著者の態度にすなおに共感できます。
会社等でこれから人の上に立とうする若いリーダーさんにもおすすめし
たい。