震災発生直後から6月中旬までの、日経本紙および日経産業新聞に掲載された連載ルポをまとめたもの。「連載を再構成した」と前書きにあるが、ほとんど加筆も、推敲も、掲載後の補足もなかったようにみえ、出版に向けた編集作業という点では安直な印象も残る(「緊急出版」ではないのだから、加筆や補足の時間は十分あったはずだ)。
また、被災した企業の操業再開に向けた奮闘、被災地に工場や営業拠点を持つ企業の現地支援活動などを取材し、日経らしい冷静なタッチで集約しているのは分かる(「知恵と労力を総動員している」式の常套表現が多いが)。しかし、グーグル日本法人の項(135頁)以外は、ほぼ全部が広報セクションを窓口にした取材だった気配が濃厚。経営トップやラインの長は登場するものの、ミドルや一線はすべてが「現場の従業員」式に扱われ、しかも記者たちはどうやら現地には行かず、東京の本社広報部だけで取材が完結しているのでは、とおぼしき箇所も少なくなかった。優良企業ほど広報体制がしっかりしているという現実の中での取材で、やむをえざる面もあるだろうが、日経の記者はリポーターではあっても、ジャーナリストではない、という世評を裏付ける水準の「ルポルタージュ」だと思う。