~永い歳月をかけて珠玉のように磨き上げられた上質な物語が、素晴らしい翻訳家の手により美しく端正な日本語に生まれかわった、希有な例。
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世に奇譚の数は数多あれど、これほど美しく、滋味にあふれて、ひとの精神を根底からゆさぶるちからをもった物語はそうあるものではない。教訓くさくもなく、迷信的でもない。宗教的でもなく、神秘的世界観に汚されることもなく、ただ純粋に人間という存在と、その運命のふしぎが詩のように語られる。作者のまなざしは人間存在をするどく透過しているが、その~~視点はさらに永劫の時へとそそがれる。そのまなざしのスケールの大きさは圧倒的で、たとえば日本人が世界に誇るべき奇譚のひとつに中島敦の『文字禍』などがあるが、この名作でさえユルスナールの作品の前では、どこか子供っぽくみえてしまうほどだ。ボルヘスでさえ、この巨星のもとでは青臭く感じてしまう。
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ユルスナールの作品は名作揃いなのだが、いささか大部で読むのに体力が必要なものもあり、誰もが親しむというわけにはいかない。その点この作品集は、ごく短い物語が数編収められているだけなので、奇譚という親しみやすい題材ということもあり、どのようなひとにも安心してひろく薦めることができる。しかしどの短編も長年にわたり推敲がかさねられていて、~~たいへんな時間がかかっており、まさに宝石のように磨き上げられている。
再読、三読、興趣つきない一冊。~