東山魁夷が残した膨大な作品群の中から、白を基調とした作品を1冊に集めたものです。
基本的に見開きでそれぞれの作品を紹介し、右に画家自身の解説があり、左に素晴らしい絵が掲載してあります。
冒頭に東山魁夷が記したエッセイ「風景は心の鏡」の一文があります。1976年の『日本の美を求めて』からの抜粋ですが、本書の『白の風景』で描かれた風景画を説明するのに、これほど説得力のある文章はないと思いました。「人間形成に重要な要素となった精神的基盤を、風景に象徴させて語った。」という文に、画家・東山魁夷が残した作品への思いが詰まっています。自然界の息吹を絵画に表す場合、画家の心象風景というプロセスを経て、再構築して提示されるわけで、その過程において余分なものをそぎ落とし、シンプルなモティーフとし、それを絵画として具現化されるのです。
59ページに紹介してある「年暮る」の京都の町並みに降りしきる雪の景色は素晴らしいものがあります。静寂の中に往く年を惜しむ気持が込められています。東山魁夷の作品が多くの方に愛されるのは、シンプルでありながら明確なメッセージが込められているからでしょう。
1964年に制作された53ページの「冬華」も凛とした美しさを感じさせる絵画です。霧氷の木と霧を通して鈍く白く輝く太陽から、精神性の深さを感じ取りました。風景をそのまま描くのではなく、心象風景として単純化しながら、モティーフを鮮明に浮かび上がらせるもので、見る者の心を深く捉えています。
巻末に全50作品の制作年代、大きさ、所蔵美術館、出展一覧、略年譜が明記してありました。