素晴らしい。
序章から高らかに宣言されるみうらじゅんの、ゴジラと共に歩んだ日本人としての誇り高い一文に感動し、本章ではいきなり「サンダ対ガイラ」(映画秘宝ファンが選ぶ東宝怪獣映画ベスト1!)の神武団四郎&大畑晃一による、ガイラの猟奇性と凶暴さの記述に、子供心に植え付けられたあのトラウマが甦る。
以下、黒沢清、佐野史郎、アレックス・コックス、金子修介、土屋嘉男、柳下毅一郎、切通理作、泉麻人ら、多種多彩な人々が、東宝特撮映画と自身との極私的思い入れやオタク度満載なマニアックな逸話を謳い上げる。これが良いのだ。同世代の筆者たちの語りが、そのままあの時代にタイムスリップしたかの如く、心の琴線に響き渡る(笑)。
中でも、みうら氏は冴えまくり、小学校の頃観た「マダンゴ」の水野久美に初めて男としてエロスを、「フランケンシュタイン対地底怪獣」で、戦後日本の社会的怨念と暗さを感じたと告白する辺り、その早熟ぶりに笑わされながらも感心する。
怪獣映画のみならず、特撮映画全般。戦争映画からパニック、SF、ファンタジー映画、つまり、「日本沈没」から「エスパイ」、「クレージーキャッツ・大冒険」、「幻の湖」までが紹介され、玉石混淆なその総てに、作品論評と熱い想いが費やされているのが嬉しい。
これらの作品になくてはならないヒロインたちや名脇役の人たちにも論じられているし、貴重なスチール写真も多数収録されている。
河崎実の一文を一部引用する。「子供の友達に怪獣がいたシアワセな時代、こんな時代は二度と来ないだろう。〜(略)〜今作や、「ウルトラQ」「ウルトラマン」は幸せな子ども時代に戻れる夢のタイムマシンであり、それはこの時代にリアルタイムで少年だった者の特権なのである」。
正にその通りである。東宝特撮世代にとっては、血湧き肉踊る1冊。分別のついた大人たちも、その装丁に退いてしまう事なく、手に取り、一読をお薦めしたい。