「パンダの死体はよみがえる」「解剖男」「人体 失敗の進化史」「ニワトリ 愛を独り占めにした鳥」など、主に新書で一般読者向けに生物学(殊に解剖学、進化・形態学の)啓蒙書と、生物系学生向けにも「ウシの動物学」「哺乳類の進化(Natural Historyシリーズ)」など、優れた本を書いている動物解剖学者・遠藤秀紀氏の最新著。
本書は本文431ページに著者を中心とする日本の動物解剖学者の日常が、28のエピソードでエッセイ風に綴られている。 読み始めてすぐ、これまで著者が書いた上記の啓蒙書や教科書とは違って、創作が微妙な割合で混じっていることに気がつき、読むのに若干抵抗を覚えたが、「(国立)大学に損得勘定を持ち込むな」との主張には私も、もとより100%賛同なので、最後は大いに納得しつつ読了した。
マダガスカルでのフィールドワークでマレー系現地人のインテリ運転手とフランス語で会話するくだりが延々と続く(p.212-242)。仏語部分は、残念ながら殆ど日本語訳で記されているが、読んでいて思わずフランス語の意欲をそそられた。 著者は、芸が細かい。
結論:
これから大学進学を考えている高校生と、現役大学生、殊に生物・医学系学徒にお勧めの本。遠藤ファンは、当然、必読である(自腹で買いましょう)。
以下、レビュアー(私)の見解補足:
国立大学を独立法人にして金儲けをやれだの、毎年1%経費を削減しろだのは、国家100年の計を誤る馬鹿げた亡国政策である。 採算と最も遠いところにあるのが、国立大学(と公立大学)ではないのか。国立大学は、費用のお得な私大でも、公務員試験予備校でもないのだ(しかし、今はそうなりかかっている)。
カネと人を投入しないで、何の高等教育機関か。 政治家と高級役人に、反日的国家観をもつ左翼(第2・第3世代)と、自分たちさえ良ければいいという無責任人間が増えたからである。 月1000円だった学費もいつの間にか、私大の半分くらいまで上昇してしまった。 私は、国立大学の学費は無料化すべきとの立場である。 ふやけた左翼市民運動的な立場からの無料化要求ではなく、国立大学は国家有用の士を長期的視野で育成しなくてはならない場だからである。当然、税金で教育を受けた国立大出身者には日本国と国民に対して(時の政権に対してではない)義務が伴う。年間、54万円も学生(つまり家計)からカネを取っておいて、国(国民)に恩義を感じろとは言えまい。
蛇足:
著者が、他人からやたら「先生」と呼ばれることを嫌う、のにも共感した。
その学校の学生でもOBでも父兄でもなく、あるセンセイの直接・間接の弟子でも、著書の愛読者でもなく、出入り業者でもない、何ら利害関係のない外部の人に、プライベートの場ですら「先生」と呼ばせて平然としている教員たちの無神経さには、「宝くじが当たったら、会社を辞めて大学院で語学を学ぶんだと騒いでいる58歳のおじさん(本書p.434を改変)」である私は辟易する。