東大工学部,「失敗学」で有名な畑村洋太郎先生の勧めで始めた筆者の講義,「産業総論」がベースとなり,主にこれから社会に巣立つ学生向けに「働く」事への考え方を総括している書籍ではあるが,会社に浸り混んだ熟年サラリーマンが読んでも得るところの多い良書である.実に多くの忘れていた気づきを与えてくれたと思った.それほど我々中堅サラリーマンは初心を忘れてしまっているのかもしれない(良い意味でも,悪い意味でも)?
そもそも,自身が大学卒業時に会社を選んだ理由は,社会のこともよく知らないで(財務指標なんて全く分かっておらず),この研究がやりたい,この業界に関わっていたい,と言った単純な発想しかなかったわけである.その自身が選んだ業界で既に20年以上働いてみると,今でこそ,「失敗したな」,と思いつつも,実はそれほど業界を熟慮したわけでないのだから致し方なし,そんな自分が過去を顧みると恥ずかしくなる.本書は,そんな気づきを多面的に与えてくれた.東大工学部機械工学科は,このような授業が受けられると言うことで,実に恵まれているように思う(講義設定の教官の能力の高さもさることながら,当然として人気講義で20年続いているそうで,この価値に気づく学生もたいしたものである!).残念ながら,小生が大学を出る時代にこのような講義は存在しなかった.仮にあったとしたら絶対に受講していただろう.
例えば,「部下の仕事の一つは上司を偉くすることである」,これは尊敬すべき上司を持っているか否かであり,偶然にも昨今の小生には尊敬すべき上司がいる.この人を偉くするべく,頑張れるのであればそれは幸せなことであると.また,叱られ上手になることは,中間管理職として最も必要なことかもしれない(いつも叱られてばかりの小生である).「成長は挑戦と失敗と受けた叱責の数に比例する」,これは重みのある格言では無かろうか? 実に勇気づけられる示唆である.
何故か,読んでみて仕事に前向きになれたように感じるのも本書の優れた点であるように思う.これを卒業間近の学生のみに読ませるのは正直もったいないように感じた.社会人の方々も,就職した頃の初心を思い返す意味でも,一読されることをお勧めしたい!