我が国ではあまり知られていない東南アジアの美術史について多くの写真とともに詳細な解説を加えたものです。口絵写真が161点(全点モノクロ)、巻末に各王朝の年表、地図、索引がついていますので、詳しい編集がなされています。著者の伊東照司氏は、早稲田大学大学院博士課程(芸術学美術史専攻)を修了し、東南アジアの様々な美術について著作がある研究者です。東南アジア美術史の手引書、大学での教科書、参考書としての役割を担っているようです。
章だては、各国別になっています。インドネシアの美術、ミャンマーの美術、タイ国の美術、ラオスの美術、カンボジアの美術、ベトナムの美術、マレーシアの美術、フィリピンの美術、でした。
東南アジアの歴史をたどるのに、中国とインドの影響を受けてきたことは十分理解していました。仏教、ヒンドゥー教、回教、儒教、そしてキリスト教(フィリピン)の影響が各国の建造物や美術にはっきりと感じられます。カンボジアのアンコール・ワット、インドネシアのボロブドールなどの定評のある建造物だけでなく、日本ではほとんど知られていない珍しい建造物を知ることができるわけで、本書の価値は非常に高いと思えます。
あとがきに、各国の博物館や美術館の紹介があり、「直接、実物の作品に接することが、第1である。」と書かれてありました。その通りでしょうが、現地を訪れることは、治安や社会情勢を考えますとなかなか難しいわけで、その意味においても本書の役割が重要となってくるのだと思います。