戦争犯罪、とりわけ東京裁判に関する研究の第一人者である著者が、長い年月をかけて丹念に掘り起こしてきた極めて貴重な資料を基に、東京裁判では何が裁かれ、何が裁かれなかったのかを熱く、しかしあくまでも研究者の冷静な視点をもって分析し、論じてゆく迫真の書。戦勝国の一方的な裁判だったとして、現在なお多くの論争を巻き起こしている東京裁判ではあるが、さて、論争の当事者のどれほどが真実を知っているというのか。本書に示された膨大な資料でさえ、すべての真相を語り尽くしているわけではなく、戦後60年を経てなお、隠蔽された闇は明らかにされていない。東京裁判の何が問題であったのか、戦犯とは一体誰を指すのか、その問いを持つ者であれば、「右」も「左」も「中道」も一読の価値はあるだろう。裁判をめぐっての生々しい人間像は臨場感に溢れており、読みものとしても面白い。戦後、戦犯の「被疑者」であったことさえ大物の証とばかりに利用し、美談の主を演じ続けた巣鴨からの一生還者のエピソード(下巻)には、思わずニヤリ・・・。