著者は「自分は素人」であると述べていますが、もちろん著者は、
フランス文学者であり、昆虫への造詣の深さは言うに及ばず、
また、硯のコレクターでもある、という意味で、一大教養人です。
また達意の文章家であることも有名。
そのことが、本書の骨董店主たちへのインタビューに、深みを持たせています。
青山二郎や小林秀雄、川端といった骨董収集家から、
ルーシー・リーなど現代作家まで、いろいろな逸話が登場するので、骨董ファンのためのエピソード集としても楽しめます。
また、骨董作品そのものではなく、
戦後から、高度成長、バブルを経て現代に至る、骨董店の経営、
その背後にある、日本人の美術品への意識の変遷について、
どの店主たちも独自の洞察をしており、
「日本人と美術」について考えるための重要な副読本とも、
位置づけられると思います。