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主人公は田村久雄。大学中退でコピーライターに。80年代を東京で生きてきた中で彼がみたもの、感じたものは。文庫解説にある主人公≒奥田英朗でなく≠なのだという誤読を誘う要因とその理由は?そこから何を感じ取っただろう。個人的には感慨無量の連作短編集だと思う。全部読ませて初めて別の読後感を誘う連作という要素を上手についている。
本作は時制はばらばらだが1978年~1989年の話でその時の社会と照らし合わせながら書いている。だからこそ余韻を誘うのか、それは作家が上手いのか。作家と似ているからと言って上に書いたようにあくまでもイコールじゃないんだな。
最後のベルリンの壁崩壊も含めて話は始まりだったり終わりだったりすることが多い。どちらからも得る物は多いと思う。激しくも速く移り変わりゆく時代を生きてきた中で久雄が得てきたもの。
文庫解説で「川の深さは」の解説も書いていた豊崎由美は“小説において過去を活写するというこころみは、読み手に現状を寄り深く認識させるという意味でも有意義なんである”と述べている。更には大きな主題より、細部の積み重ね。魅力のある一行が小説には求められる、と。多分、色んな人にもたらしてくれるものがこれにはある。感じ方は別だとしてもあー、っとさせられる文章が詰まったもの。思い入れが残るものだ。それは時代を書いてきたからでもあるだろうが作家の上手下手で変わる。だから奥田英朗というのは希有な作家なんだと俺自身認識した。いい読み物をありがとう。
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