彼らの師匠である故三音家浅丸の『悪名』の素晴らしさに惚れ込んで、83年のアナログ盤発売時に購入、その後CD化を長らく待っていた作品です。オリジナルの長尺収録や別編集も含めて復刻されてありがたい限り。
三音家浅丸が病のために若くして亡くなり河内音頭の帝都急襲を成就できなかったことは、ジョン・ハモンドが「スピリチュアル トウ スィング」コンサートにロバート・ジョンソンを招聘できなかったことと同じくらい、日本の大衆芸能・音楽にとっての痛恨事だと思いました。
その無念を晴らすかの如く帝都に討ち入りを果たした弟子たち、外来のエレキギターさえも自家薬籠中のものとする強靱な消化力を持ったリズム隊をバックに、彼らは声を振り絞ります。保存会民謡とは対極にある河内音頭がもつ「生きた民謡」としての魅力が、帝都公演という「音頭未開の地」での緊張感を伴って伝わってきます。
ライナーを読むと初見の河内音頭に戸惑った帝都の観衆との齟齬なども語られ、発売当時は分からなかった公演の詳細に触れることができるのもいいです。初めて聴いてはや30年近く、でも聴いているとついつい拳を握り体が前後左右に体がシェイクしてきます。単なるノスタルジーでは終わらない古くて新しいダンスミュージックがここにあります。
「全関東河内音頭振興隊」の隊長であったノンフィクション作家、故朝倉喬司にも捧げられた本作。「犯罪風土記」「バナちゃんの唄」「芸能の始原に向かって」といった著作を私も愛読してましたが、朝倉さんも草場の陰でこの復刻を喜んでいることでしょうね。