近頃の漫画家で、実験的手法の漫画を描かせたら、
この望月峯太郎はピカイチじゃないだろうか。
ある種表情に乏しく、デザイン的な絵柄が特徴なのだが、
そうした無表情なキャラクターたちがひとたび動き始めると、
何か作者の大きな手のひらの上で演じられる人形劇を
ひざを抱えて見ているような気分になる。
そしてその人形劇を夢中になって見ているうちに、実は
背後で大きな何かが顔を覗かせているような、作者の仕掛けた罠にすでに
嵌っているような…
そんな奇妙な不安感と期待感を抱いてしまう。
今作でもその特徴は遺憾なく発揮されている。脳に障害を持ち、まだ
言えない何かを抱えた主人公たちと、それを取り囲む怪しく胡散臭い
人々。どちらが異常でどちらが正常なのか、徐々に境界線が
ぶれ始める。言葉でなく行動でキャラクターに語らせる、実に上手いつくりだ。
特に主人公の描く漫画の劇中劇。何か意味ありげだが、あくまで控えめ
に語りかけてくる。
終盤、彼らの間に、徐々に人間関係が形成されてくる。彼らは少しずつ
何かを共有し始める。果たして彼らは、理解しあう事ができるのだろうか。
複雑で奇妙な始まりだが、物語はようやくガレージを出たところだ。
どんな方向に走り出すのか、今後の展開が楽しみだ。