本書は、東急OBで鉄道友の会東京支部長の宮田氏と、東急車輛OBの守谷氏の共著による東急5000形の解説本。製造部門と保守部門のゴールデンコンビが5000形の誕生から最盛期の活躍を解説する。
昭和21年、戦災を受けた電車の復旧を行うため、米軍が接収していた旧海軍工場跡地を借りて発足した東急車輛の創業。資材難の中で次第に国鉄・私鉄の新造車両のノウハウを蓄積し、昭和29年、ついに超軽量高性能電車5000形を産み出す。この年に東急車輛に入社したという守谷氏がこの辺の5000形誕生のいきさつと、当時革新的だった同形のメカニズムを詳しく解説する。これが本書の約半分を占める。
後半は宮田氏の担当となり、東急電鉄としての5000形導入の経緯、革新的構造ゆえの保守の困難とその克服、安定期に入って109両(ステンレス試作車5200形4両含む)までの増備の経緯、列車としての運用などが解説される。
「どこの物にも負けないような超軽量電車を作れ。寿命は10年くらいと考えて良い。」 5000形計画段階で東急電鉄から東急車輛に出された指示だという。それが109両も製造され、最初のデビューから50年を経た今、熊本で最後の2両が活躍しているという。「寿命10年」とは最近のJR東日本の電車でも聞く言葉だが平成のJR電車は果たして50年活躍できるだろうか?
さて本書を購入するにあたり注意すべきは、本書の内容が5000形が東横線を去った所で終わっている事。私は世代的に5000形≒大井町線とイメージしてしまうのだが、大井町線での活躍はもとより、全国各地に散った赤ガエルや平面ガエル達の活躍は語られていないし、写真も無い。ページを増やしてこのあたりの記事も加わればもっと良かった。また後半に「資料編」という章があり、5000形の設計コンセプト仕様書や、昭和36年時点の東横線編成表(5000・5200形を含む全形式)があったりと、なかなか興味深いが、肝心の5000形の図面に関しては運転席周りしかないことが少々残念。