2006年に出た単行本の文庫化。
小説家の大道さんに美食エッセイを書いてもらうという意欲的な試みである。私は著者の作品を読むのは初めて。食の文学としていろいろ読むなかで手に取ったものである。
東京+αのいろんな店で飲み食いし、雑誌にエッセイとして連載されたもの。基本的に店の名は出さず、どんなものを食べ、どんなことを感じたかのみ語られている。
各回とも、前半は自分自身について記述される。かならずしも食とは関係ない内容で、思い出、感情、日頃考えていることなどがけっこうストレートに綴られていく。他人の握ったおにぎりが食べられなかったこと、自衛隊員だった父親が押しつけてくる「大人の食べもの」が嫌だったこと、家の前を走る暴走族への怒りと許容といったものだ。この部分は非常に鮮烈で文学的。混沌とした感情のもつれが生々しく出ていて、このひとの小説は面白いかもと思わされる。
そして、後半が実際に店に出かけてのエッセイとなる。この部分はわりと普通。それなりに美味しそうに楽しそうに書かれている。
全体的には、失敗作だと思う。前半が強烈すぎて、食のエッセイとして読むことができない。このひとにはそぐわない企画だったのである。