特別な建物があります。空間とも場とも言い換えてもよいでしょうが。
そこには、天体を示す模型が幾つか置かれています。
さて、津上と水橋という二人の高校生が出てきます。
互いに影響を与え受け合います。
人は大抵自分の周囲、しかもわずかな周囲の人、物に反応しつつ自他を変化させます。
それらの外側に社会がまたより広い世界がひろがっています。
星と星が宇宙空間の中に位置するのと同じです。
昭和から平成にかけて、我が国では、「個」を尊重し、「個」を育てる教育方法が編み出されました。
具体的には、「個性化」「個別化」教育です。
けれども、やはり未だに異質の文化の間のかかわりあいについては、方法は発展途上にあります。
本作の水橋も、少し昔の作品である『かきかけとけしいん』のロクも、個人の自立と尊重にバイアスを移します。
そして、限りない可能性を秘めた現在の他空間と時間的未来とに適応させうる新しい約束事を作り出します。
その新しい約束事は、いったん現れてなじんだら、「新しい」ものではない当たり前のものになります。
建物の設定ではじまった以上のお話は、人物を描く画の丁寧さの中で、レアールな価値を活かし始めます。
昔、中原中也氏の詩について河上徹太郎氏が、「時が流れだす」と評言を付けたように。