著者泉麻人氏の、なんでもないほとんどの人の脳内認識感じられていない都内の無常に変わりゆく町の日常風景を感じ切り取る視点は鋭い。そして共感する。私自身、出身が京都市で、泉麻人氏と同じ感性で普通の光景の京都の町を散歩するのが好きであった。風俗の推移、地域文化の衰退変化、地域住民の変化を感じながら。現在、中年になり、移転した東京の名も知れぬ町歩き、なんと、奥深い味わいがある事よ。そして、泉麻人作品 東京23区物語の旧版と新版の町と風俗の一部残酷なまでの急速な新陳代謝、変化に驚嘆苦笑しつつ、星の数ほど有る東京の味わい深い(高尚な文化的でなくても)宿を訪ね歩く、一部過ぎ去った僧籍鴎外時代の東京市の面影も感じつつ泊まる。とても味わい深い行為だと思う。一般的に、自宅から2キロの宿に泊まることは誰も考えない。しかし、そのなかに、東京の町の持つ深遠な魅力肌合いを感じる邂逅があろうとは。
東京のノスタルジアに浸るだけの懐古趣味 昔は良かった感 論は否定したい。時代は日々進んでいる。では、生命力が感じられないので嫌いだが、この本の主張はそうではない。あまりに激しい東京の変化の中に過去の輝きを感じる、忘れずに、前に進むことも人間には必要である。
世間 おそらく、この本の支持舎は少ないかもしれぬが、興味深い本である。