前2作「Perfect Blue」「千年女優」で高い評価を得て実績を積み上げた今敏監督の力量が遺憾なく発揮された快作。
ホームレス・家族崩壊・捨て子といった重いテーマを素材としながらも、テンポのいい展開と軽妙なギャグで笑いを誘い、構えることなく娯楽作品としても観ることができる間口の広い作品。登場人物の心理描写も見事で、親しみを持ちつつ物語を追っていける。
アニメという虚構の中で東京という現実社会のウラにある病巣を映し出し、リアルな筆致で非現実的なまでの偶然の連続を描き出す、この倒錯感がたまらない。ストーリーはアニメらしい単なるご都合主義の乱発かと思いきや、実はしっかり伏線が張られた「意味のある偶然の連続」が物語を織りなしていて、クライマックスに向かって収束していく。
タイトルが一般受けしないのが本当に惜しい。一瞥しただけではどういうお話なのか想像がつかないのだ。かといってひとことで説明できるほど単純な内容ではないので、これは一度なんとかして観ていただくほかはない。
今監督らしく絵や音楽のクオリティは当然のごとく高水準で、いくつもの見方ができる多面的・重層的な密度の高い構成。これまでの作品と同様、何度も繰り返して観たくなる作品に仕上がっている。観賞後の後味も爽快で、誰にでも安心してお勧めできる一品。