1960年から5年間、早稲田の学生街に下宿していました。六畳一間で家賃はひと月六千円、好物のタンメンが50円、喫茶店のコーヒーも50円でした。
コーヒーの値段が高いとかもったいないとかは思いませんでした。わたしにとって喫茶店は一人で入る所ではなく、かならず友人と同伴の場所でした。
今と違って人との付き合いが深かったから、一杯のコーヒーを仲立ちに次から次に話がはずんだのでした。早大近辺にかぎらず、高田馬場、新宿、渋谷、
バイト先近くの日比谷、たまには銀座の喫茶店で、友人と楽しい時間を共有した記憶があります。当時の「東京ふつうの喫茶店」は、今の無機質な雰囲気と
完全に異なるものだったと断言します。泉麻人さんのこの本は、わたしの50年前の青春を鮮明にフィードバックさせてくれました。お礼を申します。