東京にある126のエリアの階段を紹介した本です。非常に珍しい切り口で、東京という現代的な都市に違う観点からスポットライトをあてたわけで、結構気に入ってじっくりと読みました。
階段の多い街と言えば、坂道の多い尾道や長崎を思い浮かべますが、意外と東京にも多く存在しているのを本書で知りました。地名に谷や山が付いている所も多いのがそれを物語っています。
基本的に見開き2ページが1ページで1つの坂道を紹介しています。住所、階段数、幅員、高低差、蹴上、踏み面、傾斜などの基本的なデータを調査し掲載していました。結構大真面目なのが嬉しいですね。それぞれ、疲労感、景観、スリル、立地の項目について5段階の評価を施しています。だから何なんだと言ってしまうとおしまいですが、街歩きもこのようにして楽しめば人生にゆとりがうまれる、といった趣が伝わってくるでしょうから。
筆者の松本泰生氏は、早稲田大学の博士課程、助手を経て、同大学客員講師で、都市の階段研究の第一人者だそうです。
本書で写されている階段の魅力は、家と家が迫っている空間に異邦人である自分が踏み込んだ先にどのような空間が広がっているのかが分からない点が楽しみの一つにあると思います。ある種の戸惑いと好奇心がないまぜになるからこそ、実用的な役割を与えられている階段の機能とは別の魅力に関心を持つのだと思います。
本書の写真を眺めているだけで、それを追体験できるのもまた本書の良さにつながっていると思いました。
もしかすればその後の再開発などでなくなった階段もあるのでしょう。東京という都市の歴史を見つめてきた場所でもありますね。
本書は東京の階段を通して、東京のガイドブックの役割を果たしているように感じました。