私は基本的に福田和也という人が好きではない。しかしこの手の本を書かせると天下一品、やはり抜群に面白く、他に同じようなものを書くことのできる者はなかなかいないのである。いるとすれば彼の刎頚の友・坪内祐三くらいかな。福田氏にせよ坪内氏にせよ東京の、しかも素封家の出で、本当の贅沢を知っており、そんじょそこらの成金とは遊び方に大きな質的な差異があるのである。福田氏の「遊び」は「あそび」ではなくむしろ「粋」な「あすび」なのであろうな。福田氏の『贅沢入門』という本も、ただの金持ちのボンボンの自慢話ではなく、教養が感じられて、じつに味わい深いものであった。一般大衆などは必死になって贅沢をしているが、福田氏の場合はといえばその贅沢さの中に「品」があり「ゆとり」といったものが感じられる。
稀代の粋人である福田氏によるこの『東京の流儀』などという本を読むと、やはり東京という街は「粋」な街なのだな、とあらためて思う。しかしこの「粋」な街・東京を本当に「粋」に遊んでいる人は、案外少ないのではないだろうか。
福田氏は東京のエレガンスを通して、真の贅沢の流儀を示唆してくれている。とんかつのような大衆的な食べ物も、福田氏にかかると、たいそう贅沢なご馳走のように思えてくるから不思議。かつて伊丹十三や北方謙三(ソープ)が示してくれていたようなダンディズムを、福田氏の本から見て取ることができる。
やはり生粋の東京人は違うな。