「日本島旅紀行」「沖縄・奄美…」に続く光文社新書出色の島旅シリーズ最新刊。続編を待ち望んでいた。今回は都内すべての有人島を網羅。「東京」とひとくくりにされやすい伊豆・小笠原諸島を、御蔵島は「桑」、利島は「椿」、新島は「コーガ石」と、テーマを設定することで、島ごとに異なる個性を見事に浮かび上がらせ、期待を裏切らない1冊に仕上げた。写真も豊富で、イメージを浮かべながら読むには事欠かない。本書まで続く一連のシリーズを読むと、島はいかに小さくとも、一つの小世界であることを痛感させられる。「沖縄・奄美」に比べると「東京」だけあって、少しゆったり感はなく、生活感のある地域なんだな、という印象を持った。
植物、食品に関する著者の該博な知識に加え、島の人の言葉を自然な形で多く挿入した著者の文章は独特で味がある。島の人の言葉は一見平凡だが、読むうち、島の人でなければ見えない、島の文化・歴史などがじわりと伝わってくる。そして描写。冒頭の硫黄島紀行でその精髄が読めるが、色、質感の精緻な記述は、あたかも一篇の掌編を読むかのようである。また、著者は普通の旅行者では見落としてしまうようなことの中から、深い印象的な物事を次々と発見していくのである。
一文一文がきらきらと輝いているが、身構えずのんびり読んでいれば、極上の島旅を追体験できる。島旅好きに限らず、紀行エッセイが好きな人はこれまでの2冊とともに薦めたい。島旅を極めた著者だが、まだ島を書きつくしていないように思える。瀬戸内海、日本海と今後の続編も期待したい。