東京の地表の形態およびその成因・発達史などを研究する際、本来の地形、つまり原地形を読み取ることが重要である。本書の言葉を借りると原地形とは「人の手のまだ入らない自然のままの地形」のことである。つまり原地形とは自然のバランスに成り立っている地形であり、大自然がこめられている地である。残念ながら今日の都市化が進んだ東京では原地形をみることは難しい。
しかし谷戸(やと)から原地形が見えてくると筆者は言う。谷戸とは全国的なものではなく、関東地方に見られるようで、もともと水田と密接な関係あるような湿地のことである。
本書は「谷戸」のキーワードとともに武蔵野台や丘陵の谷戸、崖線の谷戸の3つに分けて、原地形が公園にどう生かされてきたか、実例をもとに検証していく。また原地形は姿を消しているからこそ空白の部分に興味をそそられる。一つずつ細かに分析し読み取っていく筆者の姿が丁寧な文面から伝わってくる。
さて、都市化が進んだ東京でも意外にも緑は多い。代々木や表参道、新宿、池袋などがその代表である。なかでも新宿御苑がイギリス風景式庭園をもとに形成された事は、本書を読むまで知りえなかった事実である。このように日本の庭園はイギリス風景式庭園の影響を受けているものがあるが、一方桜田豪周辺の景観のように、思わず美しさにハッとさせられてしまう、自然が成す日本独自の地の存在も注目したい。本書の後に谷戸の傑作として登場する椿山荘と三渓園は、自然がつくった基があるからこそ生かされている土地であり、庭園である。優れた公園や庭園の多くは、残された原地形を人の手によって生かされたものが多いのだ。
本書は東京近郊の多くの有名な公園が紹介されていくので、読み手側は親近感を持って景観を思い浮かべながら読むことができる。公園の地形や歴史について学ぶ機会が少ないものにとっては、豆知識のようなものを教えてもらった心地がして、なんとも気持ちがよいのではないだろうか。また、名前だけは知っていても訪れたこのない地については、より興味をそそられ、ぜひ足を運んでみたくなってしまう。本書を読み終えると、今までの公園への視点と違った世界もまたみえてくるであろう。