著者は不動産会社の社長である。自らの投資体験・・・・ではなく、
「売る側目線で長年不動産投資をしてきたオーナーを多数見た中から、経験に即して書いている」ような内容になっています。
著者が実際にワンルームマンション経営を数戸して、経営を成功させているわけではない点を注意して下さい。
まず著者の説くワンルームマンション投資の目的は「転売による売買益を得る」のではなく、「継続した賃料収入を得ること」にあります。
そしてその背景には「将来的な高齢化社会の到来に対して、得られる年金を補う収入先を確保すること」にあります。
つまり「年金収入だけでは生活費が到底足りないから、不動産投資で補填しなさい」ということですね。
そこで「東京都内(23区内)に中古ワンルームマンション3戸を購入して、毎月15万円〜20万円前後の収入を得る」ことが目標になります。
日本は将来的に人口が9,000万人を割ると推定され、今後の人口の増減するエリアでは47都道府県のほとんどが減少地域になります。
その中数少ない増える地域が「東京都」「千葉県」「神奈川県」「埼玉県」の一都三県に「愛知県」「滋賀県」を加えた6都県になります。
中でも東京とは他の5県をブッちぎりで引き離すほどの人口増加率が見込まれているので、都内に物件を持つのが最も空室リスクが小さくなると言います。
上記は確かに人口だけ見ればそうなのですが、23区だけに物件を集中させると地震などで所有物件全てが影響を受ける可能性があります。
なので東京都以外はダメと決め付けることはないと思います。例えば、各都道府県の県庁が所在しているような大都市はピンポイントで見れば「今後の人口増加が見込まれるエリア」になりますし、県全体では減少してもそういった一都市に人口が集中するのは、日本全体の中で東京都に人口が集中するのと同じ理屈かと思います。
ですので、各都道府県の中心都市(人口が一番多い都市)などは検討してみていいでしょう。
ちなみに私は「滋賀県」は狙い目だと思っています。理由は大阪・京都に通勤・通学し易く、北陸・中京地方への分岐点にも位置しているので古来から物流の要所でした。
一都三県と愛知以外で人口増加(しかも九州の中心都市の福岡・北海道の中心都市の札幌・東北の中心都市の仙台を差し置いて割って入ってくる)しているのはかなり異色です。そこを評価します。
ファミリータイプの間取りよりワンルームを勧めるのは
・「リフォーム費用がファミリータイプは高額」
・「価格が高い分を家賃収入(利回り)で埋められない」
・「ファミリーのほうがリフォームに日数が掛かるので空室期間が長くなる」
・「金利の安いときはファミリーは賃貸よりも自宅購入のほうに流れる」
といった点からワンルームのほうがファミリーより明らかに優れているからだそうです。
しかし、ワンルームのほうが回転がファミリーに比して早い点等には触れていないので、上記の理由よりもやはり「その物件所在地でのシングルとファミリーの需要と供給のバランス」に着目したほうがいいような気がします。
購入は基本的に「ローンを組んで」になります。
ですが、著者が「融資後の繰上げ返済をすることを推奨していること」からも判るように、可能なら最初から「現金買い」をするべきですね。
現金買いならリスクは最小限になります。これに勝るリスク減少法はないと言ってもいいくらいです。
1つの物件の借り入れの割合を40%以下にすることが目安だそうです。40%以下の状態ならば今後に予想される金利の上昇局面でも支払いを乗り切ることができるから。
全額ローン購入は止めたほうがいいようです。1割以上は自己資金を入れるようにしないとバランスが悪い。
実際の購入物件の選び方は「バブル期の築20年前後の物件」と「築浅(10年前後)物件」に分かれ、著者は築浅物件が勝ると言っています。
理由は築浅物件のほうが設備のグレードがよく、供給数が少ないので希少価値があるから資産価値も高いこと。
特に著者の勧める東京都23区内はワンルームマンション規制が掛かり、将来的に物件供給は減るが需要は単身世帯の増加で減らない。
そうなると中古ワンルームに需要が集中して、設備・グレードの高い築浅物件のほうが選ばれる確率が高い。
他にも物件選びの基準としては
・駅から徒歩15分以上の物件は避ける。(可能なら徒歩5分以内か。この中でも最重要事項。)
・洗濯機置き場が室内にない物件は避ける。
・オートロック等のセキュリティーが不十分な物件は避ける。(1階の部屋も避けたほうがいいか?)
・述べ床面積が15平米以下の物件は避ける。(実際は単身世帯の増加を見越して20平米以上限定?)
・築が新耐震基準になっていない昭和56年以前の物件は避ける。
・線路脇・車通りの多い道路沿いは騒音を考慮して避ける。
・繁華街等の風俗店や嫌悪施設のある立地は避ける。
等は押さえておくべき重要ポイントかと思います。後は付け足すとしたら可能なら「バス・トイレ別」ですかね。
エレベーターも管理に費用が掛かるので、ないほうがオーナー目線では助かるようですよ。
想定される1ヶ月の賃料は「5万円台〜7万円台に収めるようにする」そうです。
高額賃料を払える人の割合は少ないので、一番多い賃料の需要に合わせることで空室リスクの軽減を図ります。
私は基本的に「ワンルーム投資には懐疑的」です。なぜなら「儲かるなら業者が分譲しないで自分たちで持つでしょう」と考えるから。
企業でも一棟マンションやビルを資産として所有しているところはあります。
でも、ワンルームマンションをいくつも資産として所有している企業は聞いたことがない。(自社社員の寮として使用する場合等を除いて)
後半で著者は地方の木造アパートと比してどれだけ都内の中古ワンルームマンションのほうがいいかと列挙しています。
・地方は需要が少なく、空室率が20%超えるエリアもある
→これは場所によるでしょう。事前に調査して地方であっても需要のあるエリアを選ぶことで避けられます。
・地主が持っている土地にアパートを建て、その地主の物件と自分の物件が競合すれば不利。
→好立地ならば物件が乱立するは、需要過多の中の問題のひとつ。地方だけの問題ではなく、都内でも同じですよ。
それに、地主大家は勉強不足の方が多い。本気で真剣に取り組むならば経営で遅れをとるはずはないです。
・地震や火災の被害が全ての部屋に及ぶ
→確かに火災なら木造は不利ですが、地震は場所を都内に絞っていたらRC造区分でも全部に被害が出るのでは?
新耐震基準以降の建物に絞ることである程度はリスクを軽減させられます。
・アパートは定期的な修繕から逃れられない
→修繕はRC造物件でも必要ですし、そのために毎月修繕積立金を支払わなければならないのです。アパートは自分で積み立てておかなければならないと言いますが、
逆に言えば「リフォーム内容を自分でコントロールできる」のだということ。リフォーム費用を自助努力で下げることも可能。工夫次第ですね。
こうして見ていくと区分マンションも地方の一棟アパートもそれぞれ「一長一短」あるなあという印象。
両者を組み合わせれば互いのリスク回避にもなるのでは?とも考えました。
但し、著者は本文中で
・「都内のワンルーム賃貸需要は将来にわたり減少する心配がない」
・「まとまった現金が必要なときはいつでも時価で売却できます」
・「すぐに現金が必要な場合でも、時価よりも少し安くすればすぐに買い手が付きます」
・「ローンを完済してしまえば、毎月の家賃の全額が収入になります」
・具体的な金額を出してシュミレーションをしているが、経費についての言及がなく「机上の空論」に近い。
など、「自分で実際に運営をしていないから書いていることが都合のいいことになっているな」と感じられる点も多々あります。
それでもワンルームマンション投資を勧める本の中では「比較的まともなほう」です。
説得力のある部分と、説得力の感じられない上記部分との乖離が激しいのが難点で★3つ評価です。