本書は、「不動産を買う前にまず街を買え」「不動産の資産価値を決める重要な要素はその換金性と収益性が高いことである」といった論点の下、歴史(東京という街の成り立ち)を含めて専門的な視点から東京を分析し、どういった街が「買い」であるのか、が明快に語られてあり、大変勉強になる。とくに街の歴史に関しては詳細に書かれてあり、歴史的読み物としても楽しめる。だが、家土地購入が一世一代の買い物となる一般市民レベルで、「どの街に住むといいのか」という切実な問いには、残念ながら真に「応えて」いる、とは云い難い。本書の肝である第4章の「東京7ブロック 55エリア別 「この街に住んで幸せか」」の分析された街が象徴的だが、投機目的の業者やごく一部の富裕層を除いて、「原宿、表参道、青山」「赤坂、六本木、高輪」「日本橋、池之端」といった街の資産価値情報が、本当に必要であろうか。著者は、23区内、それも中心部の分析には一生懸命だが、例えば「西武新宿線(沿線)無し、東武伊勢崎線は北千住以降、足立無し、総武線は錦糸町以東、葛飾、江戸川無し」「中央線は三鷹から立川まで無し」「板橋無し、町田多摩地区無し」と、東京のエリア分析と云うには中途半端である(定点分析の価値無しとの見立てだろうか)。また評価もほとんどが5段階中の3であり、差が見られず、評価結果も、一般人が素人目に予想した内容とほとんど差がなかった。つまり「学者論文」としては面白いのだが、刺激的な題名ほど「庶民の実役」には立たない、といった印象を受ける。もう少し一般市民の視点で書かれるとなお良かっただけに、惜しい。