「東レは戦後の再スタートを切ってから10数回の危機に直面した」とは前田氏の弁だ。財界人への取材と論評に定評のある著者は、「前田の半世紀に及ぶチャレンジは、そのまま日本企業の生きてきた姿であり、サラリーマン史でもある」と語り、“前田研究”の今日的な意義を強調する。また、「化学技術者から経営者への変容もドラマチックだった」と述べ、先端技術の追求や制度改革には積極的でありながら、根底では軸がぶれない前田氏の経営哲学を高く評価している。
前田氏へ寄せられたのは賛辞ばかりではない。バブル崩壊後には一時的な業績悪化に見舞われ、社内外からバッシングを受けたこともあった。また、社長を退きながらも代表権を残した会長職に就いたことは「前田院政」と批判された。著者は前田氏を巡るそうした風評には誤解が多いと指摘し、自らの取材で得た新たな見解を示す。
(日経ビジネス 2006/07/10 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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