塩野七生氏の「ローマ人の物語」シリーズがいよいよ今年末にフィナーレを迎え、476年の西ローマ帝国滅亡で幕を閉じるのではないかと私は考えていますが(もちろん私の予測を裏切る嬉しいサプライズは歓迎です)、そうするとイタリア史ファンとしては、同氏の「海の都の物語」がフランク族を撃退してヴェネツィア建国から始まるまでの間、空白の期間が生まれることにもどかしい思いをすることになります。その空白の期間の一部を埋めてくれる嬉しい歴史書が本書です。ハイライトはオドアケルを倒し、イタリアを支配するに至ったテオドリック大王の活躍(5〜600万人のイタリア人、つまり西ローマ人を10万人ほどで支配し、しかも善政を実現したのですから、たいしたものです)でしょう。そもそもゲルマン民族の大移動の時代を取り上げた(日本語による歴史ファン向けの)本が少なく、ましてやある一民族の、その原住地から移動を開始して滅亡を迎えるまでをわかりやすく概観する本は、私が知る限り、これまでなく、そういった意味からも貴重な本であり、「ローマ人の物語」シリーズの続編としてゲルマン人の物語を書くとすれば、その第1巻に位置づけてもよい本書は、ヨーロッパ史ファンの方には是非一読してほしいと思います。