本書は、いわゆる「東アジア世界論」の内容を簡潔に紹介し、新たな研究成果を踏まえ、その意義や限界を明らかにしながら補足をこころみるものです。
この「東アジア世界論」、西嶋定生という先生が70年代に提唱した東洋における伝統的国際関係に関するモデルです。すなわち、近代以前の東洋では、中国からの政治的影響力の下、漢字・儒教・中国仏教・律令制という中華文明的バックグラウンドを共有する国々が自律的な圏域が形成されており、各民族は、そうした枠組みの中で政治的・文化的な相互交流を繰り返しつつ発展を遂げてきたというものです。
筆者によれば、この「東アジア世界論」は、60年代における日本・アジア関係についての実践的な問題意識を背景としたものであり、その頃の国際環境に対する西嶋教授の問題意識が投影されているとしています。また、著者は、その後の研究成果を踏まえ、中国から周辺諸民族に対する影響だけでなく、周辺諸民族相互間の交流にも着目すべき点があること、周辺諸族が中国の政治・文化を受容しようとした意図の多様性にも注意すべきことなどを説明しています。
メジャーな学説の解説をコンパクトにまとめたものであり、問題意識をもって読むぶんには重宝します。西嶋教授の著作に目を通してからお読みになることをおすすめします。