著者は、本書で「現在の精神分析から、遠くへ行くこと、それが目的」で本書を書いたと言う。
精神分析は「学」ではない。とは多くの精神分析家の言うところだ。
著者もまた、分析“家”を名乗る。なぜ精神分析は「学」ではないのだろうか。
「学」でないならば、「技術」なのだろうか。
病院にいるひとに例えれば、医学を修めた医者ではなく、レントゲン技師だというのだろうか。
ぼくは、精神分析家が、臨床家として治療に望むことに、大きな危惧を表明する。
何をもって、精神分析家が病気が治ったと判断するのか、ちっとも説明されないし、
合点が行かないからだ。この本でも同様である。
著者は、これまでなされた精神分析批判が「表層的」だと言うが、
どこが表層的で、その批判に対してどんな反論があるかは少しも示されない。
統合失調症は、精神分析の治療対象であるが、
それと「基本的病態が同じ」(ぼくはこの意見には同意しない)自閉症については、
精神分析はなにか有効な手立てを持っているのだろうか。
自閉症は「心因」ではない。
本書は問い、だけは立ててあるが、これに有効な答えは示されない。