この作品のタイトルにもなっている杢二と言う人物は、べつに主人公のようには描かれている訳ではない。
杢二はかなり歳の離れた兄や姉、ましてやもっと歳の離れた父母の中に生まれた。歳の離れた家族の中で完全に孤立していた。そんな世界で育った彼には、自分の居場所は何処にも無く感じられている。だから根無し草の様な生活をしていた。でもそれは杢二にしては当たり前の日常であり、寂しいとも思ってはいないようだ。
居場所の無い、孤独で寂しい生活の中でも似たような性格の女性と同居をするが、ある日飛び降り自殺をして死んでしまう。
ストーリーは兄が杢二の足跡をたどるように進行していく。進行の過程で杢二独特の寂寥感が漂う世界が浮き彫りになっていく。
なお表題作は
【第90回(1983年下半期)芥川龍之介賞】受賞作。