村上春樹全作品 1979〜1989〈1〉 風の歌を聴け;1973年のピンボール村上春樹全作品 1979〜1989〈2〉 羊をめぐる冒険に続く作品である。いわゆる鼠三部作の続編である。
満たされぬ思いを抱えて生きる「僕」が「羊をめぐる冒険」の舞台となった「いるかホテル」に再び呼び寄せられ、
自分を回復しようと模索する中で、「僕」を取り巻く人々が死んでゆく……という筋書き。
なぜだか鼠三部作のときには見られなかった左翼臭がする。
「僕」がやたらに「高度資本主義社会」を連呼したり、
たわぶれに左翼学生の言い回しを用いてみたり、留置所経験を回顧したりするのである。
別に物語に左翼臭さを用いること自体は良いのだが、
本書に左翼臭さが加わったことで過去の三部作にまでその臭いが移るように思われるのが微妙であった。
文章力は相変わらず素晴しいのだが、
今作で強くなった主人公の内面の受け身の姿勢があまり好きになれなかった。
外面的にはよく動くのだが、内心では「他者からの救いを待つ」というのがどうも……。
あと、なんでやたらに登場人物らが主人公のことを「変わってる」と言うのかも分からない。
主人公自身が一応「普通の人間」を自任しているところに「普通じゃない」と言われるのが気持ち良いのかな?
そこで選民意識をくすぐられる読者の需要を満たしている、ということか。