本書に収められているのは以下の8作品。
「紅い花」「汽船」「バルセロナの書盗」「白い機影」「登仙譚」「白孔雀のいるホテル」「ニコデモ」「村のエトランジェ」
魅力的な初期作品ばかりである。「白孔雀のいるホテル」は、かつて河出書房から出ていた河出新書の1冊に入っていた。しかし、今ではそれは古書としても相当な値段がついており、容易に手に入らない。この短篇はおそらく全集以外では読めないのではないだろうか。そして、その全集も1冊1万円以上するわけだから、なかなか買うまでには至らない。そういう意味で、今回の講談社文芸文庫版はありがたいことこの上ない。私ははじめ表題作目当てで買うつもりだったが、この作品が収められていることを知り、思わず小躍りした。
表題作「村のエトランジェ」は、芥川賞候補作にもなった小沼の代表作である。ちなみに、この作品は佐伯一麦の『芥川賞を取らなかった名作たち』(朝日新書)でも詳しく取り上げられている。
本書に収められている作品を読み感じるのは、死が描かれているにもかかわらず、なぜかトーンは暗くない。梅雨が明けた夏の日のようにカラッとしている。そこがこの作品集の魅力といえるのではないだろうか。