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杏っ子 (新潮文庫)
 
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杏っ子 (新潮文庫) [文庫]

室生 犀星
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 882 通常配送無料 詳細
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商品の説明

受賞歴

第9回(1957年) 讀賣文学賞小説賞受賞

内容紹介

野性を秘めた杏っ子の成長と流転を描いて、父と娘の絆、女の愛と執念を追究し、また自らの生涯をも回顧した長編小説。晩年の名作。

登録情報

  • 文庫: 521ページ
  • 出版社: 新潮社; 改版 (1962/6/12)
  • ISBN-10: 4101103062
  • ISBN-13: 978-4101103068
  • 発売日: 1962/6/12
  • 商品パッケージの寸法: 15 x 10.6 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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カスタマーレビュー

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最も参考になったカスタマーレビュー
14 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 荒野の狼 トップ500レビュアー
形式:文庫
金沢三文豪の一人である室生犀星の最長の長編ですが、もともと新聞小説であったため、一章の区切りが現在の新聞小説と同様に短いので読みやすく、2週間ほどで読破できました。室生犀星の自伝的小説で、芥川龍之介などの実在の人物が実名で登場します。犀星の幼年時代からの話も前半にありますが、中心は娘が生まれて、結婚してからの話です。結婚生活をすぐに諦めて投げてしまう人物と苦しみを重ねても結婚生活を続けていく人物が対照的に描かれています。こうした中で、犀星がモデルの主人公は、苦しんで生涯の損をするところから芸術とか学問とか映画というものが作り出される、人間は一生不幸であってたまるものか、と語ります。困難にたたきあげられて強くなっていく登場人物の姿勢は感動を呼びます。
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7 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 優れた父親像を見る 2011/9/6
形式:文庫
室生犀星の自伝的な小説という。生まれ落ちた境涯の記述からはじまり、
娘、杏っ子の不幸な結婚生活を父親として支え、破綻をも静かな目で
見守る姿が描かれる。

びっくりするのは、書かれた当時、児童虐待やDVという言葉も
概念もなかったのであろうが、描かれているのは、児童虐待であり、
DVなのだ。室生犀星がこの境涯から、優れた文学者になったこと、
が奇跡に思える。
また父親として、娘と息子を見守るまなざしには、時代の限界もあるが
人間としてとても誠実なものを感じた。DV被害という言葉もない時代
暴力を受けてなお離れることができない娘の見守り方は背景に経済力が
あるとはいえ、あっぱれであった。しかし、女性が男性に依存せず
生きていく方策がいかになかったかが忍ばれ、暗澹なる気持ちになった。
このレビューは参考になりましたか?
4 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 ◆愛娘に対する限りない情愛 2012/11/17
形式:文庫
室生犀星という人は、主に詩人として活躍した人物だと記憶していた。だが意外にも『杏っ子』は、犀星の作品中、最も長い小説であることを知り、どれ、ひとつ読んでみようかと、わりと最近になって読了したものだ。
この小説はいわゆる自伝小説で、ちゃんと実名で登場したりするのでわくわくしてしまった。犀星の生い立ちなどを読んでみると、本当にお気の毒としか言い様がない。それはもう辛酸と苦杯を舐めた幼少期で、よくぞ文士としてこれだけの地位を築くことが出来たと、賞賛したくなってしまうほどだ。私生児として育てられたせいなのか、あたたかな家庭への憧憬が強く、実に家族思いで、文章にも自然と健全な精神がたゆたゆと流れている。長女・杏子に対しては特に甘く、中古とはいえドイツ製のピアノを買い与えるくだりは、なんとなく微笑ましい気さえする。

作中、何度となく読み返してしまったのは、関東大震災でそこらじゅうの商店が品不足の時、親友の芥川龍之介が出し抜けに「君、汁粉を食おう」と言い出すシーンだ。犀星は「汁粉なんてあるのかね」と、首を傾げながらも一緒に汁粉屋に行く。案の定、汁粉なんてあれだけの混乱の最中にあるわけがないのだが、なんとなく笑える。そうか、芥川は甘い物が好きなのかと、ここで初めて私は知った。
他にも私のツボにはまった箇所がある。それは、犀星が震災後、しばらく故郷の金沢に引き上げようとし、それまでの住まいを菊池寛に貸そうかという段取りを芥川と話すシーンだ。
「それから菊池が明日にも君の所に行く筈だが、家を見せてもらってから気に入ったら借りるそうだ」
「狭すぎないか」
「そういう点は無頓着な男だよ」
なんだか錚々たる文士たちの付き合いが目に浮かぶようで、私にしてみたら感動モノなのだ。そうそう、他にも気に入ったところがあるから紹介しておく。それは、愛娘の杏子が自転車に轢かれて、瞼の上を二針縫い、翌々日、幼稚園を休む際のシーンだ。芥川の次男坊を連れた芥川夫人が登園の誘いに来て、犀星夫人と会話する。
「おあとがのこらないでしょうか」
「二針縫ったんですが・・・」
大人たちの会話の傍らで、幼稚園同士の杏子と芥川の次男坊が何やら他愛もないおしゃべりをしている。この場面が、それはもうグッと来る。なんとも言えない柔和な雰囲気が、犀星の自然体の文章からふわふわと湧き上がるかのようだ。

小説というものは、必ずしも作家の頭の中でちょこちょこっとこしらえたものの方が良いとは限らない。それが事実に基づくものであっても、そこに限りない真実と苦悩を見出した時、読者は思いがけず、新鮮さと高揚感を覚えることだろう。
文学とは他者との共鳴により、意義とか意味が生まれるものだと思うからだ。
『杏っ子』は自伝小説だが、きっと長く愛され続けていく作品だと思う。親子という目に見えない血の絆が、実は何よりも尊い情愛であることを物語っている。溢れんばかりの優しさと切なさに富んだ作品だ。
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