今年で放映10周年を迎え、ますますその人気に拍車をかける大ヒットドラマ『
相棒』。本書は主役である
杉下右京が単独で事件に挑む二部構成によるオリジナル小説となっている。
・ 休暇で訪れたスコットランドを舞台に偶然滞在先で起こったスコッチ蒸留所における密室殺人の謎を解く――第1話『霧と樽』
・ 出張先の奄美大島で護送予定の麻薬密輸犯が逃亡した事から捜査に加わり、次第に浮かびあがる犯人の本当の狙いとは――第2話『ケンムンの森』
時系列としては第1話は、『season2』(第1話『
ロンドンからの帰還〜ベラドンナの赤い罠』)の休暇でイギリスに滞在していた時期の物語(注:当時の相棒・亀山薫は警視庁の運転免許試験場に勤務)で第2話は『season7』で亀山薫の退職後(第9話『
レベル4〜後篇・薫最後の事件』)から新相棒・神戸尊が着任する (最終話『
特命』)までの空白期間に起こった時期の物語となっている。
名探偵・
シャーロック・ホームズを産んだイギリス(スコットランド)を舞台に右京以外は全員が現地人(英国人)という異色の設定の中で右京がホームズばりの名推理を働かせて事件解明に挑む活躍を描いた第1話や奄美大島で逃亡した麻薬密輸犯を追跡中に起こる足取りと不可思議な事件について犯人の痕跡を基にその一連の謎と密輸犯の真の目的を右京の優れた頭脳が解明する第2話などどちらも杉下右京の特徴を捉えた読み応え充分の内容である。できればどちらも映像化(特に第1話)されてほしい。
本作ではスコットランドと奄美大島の2つの舞台で優れた名推理を働かせる名探偵的な杉下右京の一面を描いた内容となっているが、『相棒』の優れている所はそれに留まらず、右京の直情的な物事の考え方(例え警察内部で不正が揉み消されるような事項でも真相を明らかにしようとする性格)や警察組織において立場上不利になろうとしても決してぶれる事のない頑なまでの強い意志が杉下右京というキャラクターや『
相棒』という世界観を面白くしている大きな要因である。
その意味では私自身、時には杉下右京という人物についていけない事もあるがそうした細かな人物設定があって『
相棒』が大きな広がりを見せる魅力となっているのだろう。