武士道、仏教、神道、儒教・・・。このところ日本人のものの考え方、大げさに言えば民族的な思想のバックボーンに興味をもっている。なかでも、江戸期の武士階級の基本的教養であった朱子学は、武士道における忠義の精神に深く関与している、ということで手にとって見た。
ところが、意外なことに朱子学には主君への忠誠といった徳目はどこをさがしてもみあたらないという。萱野覚明氏の「武士道の逆襲」によれば、戦国期の封建制度下では家臣が主家を辞することはごく当たり前だったという。武士は7回主人をかえて一人前、という言葉もあった。では、忠臣蔵のあの精神はいったいどこからきたものなのか。残念ながら本書にはその答えはみつからなかった。
著者の島田虔次氏(1917−2000)は、京都大学で中国思想史を研究した専門家である。本書は京大の東洋史学講義を一般向け概説書にあつらえなおしたものだそうだ。1967年の初版から40年、なんと34刷を重ねている。この手の教養書としては驚異的な数字だ。これだけでも本書のスタンダードとしての価値が知れようというものである。
とはいえ、予備知識なしで読みこなすのはさすがに骨が折れる。多少入門書をあたってからのほうがいいかもしれない。教養とは頭脳の格闘技だ、というような方にはもちろん超お薦めである。