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そうは言っても、二人の知識量と経験と柔軟な思考はすばらしく、日々顔を合わせなければならない近視眼的な志向をする人々が、遠い谷の底で右往左往しているだけの存在ように感じさせられた。それほど、大局をとらえた柔軟な発想を二人はしている。
途中、投資家ジョージ・ソロスの話が出てくるが、彼は、アルバイトをしながらロンドン大学のスクール・オブ・エコノミクスで学んだらしい。そこにいた教授、哲学者のカール・ポパーが著書の中で言っていることが心に残った。「物事は不確実で、人間は必ずまちがう。だからその間違いを認めて、それを常に修正していくオープン・ソサエティこそが理想社会である。」また、本書で紹介されている畑村洋太郎の『失敗学のすすめ』、藤田田の『ユダヤの商法』も読んでみたい。
肯定的に見れば、現代は、農業革命・産業革命に匹敵する「脱産業資本革命」の時代故、「大人になってからも、絶えず新しい知識を取り入れている勉強熱心な人にとっては、寧ろ成功が得やすい」事になる。
読者の多く、特に40代以上は、バブル崩壊後の不況の中で、「成果主義」、「実力主義」が行き渡り、なかなか生きてゆくのが難しい事は感じているであろう。「能力の無い者はいつの時代も、どこの世界でも冷遇されてきた」とまで言われてしまうと隠れる場所を失う。しかし、評者を含めて、学歴社会の崩壊と成果主義の顕在化が叫ばれ、「今後は勉強が必須の社会となっている」と言う警鐘は再確認せねばならない。
本書は、「教育論」でもある。「ゆとり教育」に反対し、「初・中等教育におけるつめこみ主義」の必要性が展開されている。ここからは、「生き馬の目を抜く」金融市場で「ミスターYEN」と呼ばれ、今は大学で教鞭を執っている榊原氏と、「認知心理学」を専門とする精神科医で「勉強法の大家」である和田氏の独壇場である。
本書の中程にある「バイリンガル・バイカルチャー」の部分は、40~50代の読者には歯痒く感じられるであろう。ここに5つ星をつけなかった理由がある。是非、30歳までの若者に読んでもらい、現代の職業倫理を味わって欲しい。とは言え、中年以降の読者も「目から鱗が落ちる」思いをするであろう。最近のハウツー物では、類書に稀なスピード感と研ぎ澄まされた同時代感が溢れている良書である。
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