米国経営大学院留学時、学校で再三強調されていながらなかなか腹に落ちてその重要性を理解できなかった言葉が「リーダーシップ」であった。当時は自分が日本人だからかと思っていたが、本書を読むとどうやら米国でもその理解は十分でなかったようである(少なくとも本書執筆時点では)。
「愛とは何か」という質問に答えるのが困難なように、人生や活動の根底を支える概念は殆ど理解されていないという。本書では、リーダーシップ研究のパイオニア、ウォレン・ベニスが、まさに「リーダーとは何か」という問いに回答を試みる。(余談だが、『スターバックス再生物語』ではハワード・シュルツが同氏に助言を求める場面が出てくる。著者は現場に生きる学者であるようだ。)
「マネジャーはものごとを正しく行い、リーダーは正しいことをする。」 この有名な文句で始まる本書は、随所でマネジャーとリーダーを対比することで「リーダー」を定義し、さらに、観察した90名のリーダーが体現するものを4つの戦略にまとめ直すことでリーダーをリーダーたらしめるものの解明を試みる。
人を惹きつける「ビジョン」を描く。方法を問わず、その意味を「伝える」。ポジショニングを明確にし、「信頼」を勝ち取る。自己そして組織を創造的に「活かす」。
リーダー達の言動を数多く簡潔に引用し、そこからリーダーシップを構成する概念を紡ぎ出す様はオーケストラの指揮者のようである。示唆に富むエピソードが豊富に紹介されるが、逸話集に終わらない。そこから抽象概念が説かれるが、フワフワしていない。このバランスの良さに引き込まれ、考えさせられる良書であった。
本書は「リーダーになる方法」を提供するものではない。しかし、「リーダーとは何か」という問いに答えられず、リーダーシップという概念の理解に興味を持った人ならば、一読して決して損しない一冊だと思う。