いい話というには悲惨な話なんだけれど、この本は読ませる。戦争を体験していない世代の作家が戦争を体験した両親の話に本を盗むというアイデアを加え、さらに死神という途轍もなく便利(いつ、どこへでも行ける!)な語り手を持ちいることで物語が出来上がっている。
話の結末を先に話しておいて、それからゆっくり語るという手法もこの本では成功している。どこに落ち着くかを知りつつ、きちんと物語を楽しむことが出来る。うまく書かれている。
盗んでも本を手にしたくなる。その気持ちはとてもよく判る。これ、本を読まない人には判らないんだろうなぁ。本というのは触っているのが気持ちいいものなのだ。文化に直接触っている感じなのだ。この本ではさらにそれぞれの本がそれ以上の価値を持ちうることが判る。あの時にあそこにあった、あの本という特別な価値。もちろんそれは本だけの特権ではないのだけれど。
感傷に耽ることなく、悲惨な戦争と生きる力を実感出来る素晴らしい物語だ。