本書には水木しげる先生の数々の名言がおさめられています。どのページを開いても先生
の言葉なので、ファンにとっては夢のような一冊です。重要な部分は活字のポイントを大
きくして強調していますし、また水木先生の絵が適度に織り交ぜられているので、とても
よい出来映えだと思います。いつも持ち歩きたいのですが、サイズがちょっと大きいの
で、文庫版の出版をつよく望みたいです。
著者・水木しげるとなっていますが、先生は「はじめに 至福の日々」という冒頭の見開
き2ページに文章を寄せているだけで、実際は大泉実成さんが編集されています。ご本人
が「自分の好きな水木さんの言葉をパソコンでパタパタと打ち込」まれたとのことで、編
者の好みが色濃く出ているように思いました。
それにしても水木先生の言葉に出会うと、なぜこれほどまでに勇気づけるのでしょうか。
おそらく水木先生が、ご母堂から「お前はゆっくりだ」といわれても、軍隊でビンタをく
らっても、「好きの力」を信じて「自分主義」で生きてこられたことが、「人生における
けたはずれの経験値」となって表れているのだと私は思います。
最後に、本書で気になったのは編者がかかわった刊行物からの引用が目立つことです。
ざっと数えると約140日分、4割近くに達しています。エンゲル係数をもじってオオイ
ズミ係数と表現すると、これはかなり高い数値です。諸般の事情があったかもしれません
が、理想をいえばもっと幅広い文献から名言を選んでもよかったと思います。
あとひとつ、3月8日は水木先生の誕生日ですので、本書でもこの点は配慮してもらいた
かったです。個人的には、先生の第一声、「ネンコンババ」(猫の糞)あたりが候補では
なかったかと思います。