6年振りの新作です。
全5話からなっていますが,うち2話はアンデルセン童話をベースにしています。
前作と同様,古典童話を元にしながらも,創作童話の色合いが濃くなっています。
また,各作品のあとに,解説・解題があるのも同様です。
本作の特徴の一つは,著者自身も述べているとおり,悪徳から聖なるもの・無垢なるものへの「価値観転換のおもしろさ」にあります。特に『マッチ売りの少女』に濃厚に表れています。
また,童話特有の「残酷さ」に託して,「自己抹殺の衝動」も描かれています。『豚殺しごっこをした子供たちの話』がそれです。
僕の個人的好みは,『マッチ売りの少女』です。
作者は,少女と,かの「サド侯爵」を邂逅させています。
ただ,サドという人物のもつ存在感があまりにも大きく,また短編という紙数の制約上,前述の「価値観転換のおもしろさ」が十分に描き切れていないのが残念です。
また,作品集の最後に置かれている『人殺し城』も好みですが,これは「憎悪の連鎖」・「埋まることのない虚無感」といったモチーフで書かれており,作品集全体の読後感としてはやや重いといえましょうか。
本作品は「最終章」と銘打たれていることから,続編は期待できないのかもしれません。しかし,本作品が出版されたのは,「童話ブーム」も一段落した2008年であることからしても,単に時流に乗って書かれたものではなく,作者好みの題材であると思います。ならば,形を変えてでもよいので,ぜひ「桐生版童話」の続編を期待したいです!