三橋さんの作品また読んでしまいました。いつものように、著者はいくつもの誤解を数字を使いながら解き明かしていきます。本当に日本は外国に頼らなければ生きていけないのか?これが著者の本質的な問題関心です。著者は一面的な理解を拒否します。そこで強調されるのは現実の二面性の中での相対性の発見と評価です。「日本に限らずどの国も外国と断絶していくことはできない、しかし日本の海外への依存度は相対的な意味では決して高くないという」事実が淡々と証明されていきます。この事実の冷静な認識の下で、戦略として示唆されるのが、ガラパゴス化です。「意識的に世界の潮流から外れる、世界の基準や市場を意識しない」、そこにこそ外需に相対的に依存しない巨大な日本の優位があり、それが結果的に維持可能な国際的な競争優位の構築につながるというパラドクスの認識です。このパラドクスの認識と指摘は見事なものです。これは世界認識の本質ともいうべきものです。そうサッカーと同じで、一番の危機が一番のチャンスというわけです。(ただ日本人はいまだにサッカーの本質を理解できていませんが)著者は決して楽観論を振りまいているわけではありません。日本が、重大な挑戦や危機に直面していることはそのとおりなのです。ただどの国も同じように重大な問題に直面しているのです。それ以上でもそれ以下でもないのです。著者は現状のアメリカの金融システムの異様な状況を見事に整理しています。したがって自動車に代表される輸出産業が成長のエンジンとなりえないというのはそのとおりなのです。ただ、日本には日本の強みがあり、そのポジショニングは必ずしも相対的な位置では恵まれていないわけではないということです。これに対して、日本のメディアの本質はそのデマゴーグ性です。タイトルからは「面妖な人々」をもっと具体的に取り上げての厳しい批判を予想していたのですが、実際はいつものように突き放した揶揄に抑えられています。もはやマスコミのひどさは、どこかの国の無意識な第五列と割り切ったほうがいいのかも知れません。もっともその外国自体も、メディア(危機の行商人)に巣くう病人が自分の面妖な頭脳の中に作り上げたもので、どこにもないものなのでしょう。メディアに決定的に欠落しているのは当たり前の「現実感」の欠如です。つまり相対性と多面性の認識の欠如です。そう彼らは無責任な子供以下ということです。ただし危険なおもちゃを持った子供ですが。