支払いのレジでお金を落としてしまった時、「いいんです、いいんです、気にしないでください」と、心のなかで必死に唱える穂村(ほむら)さん。生まれてから大学を出るまで、自分にあだ名がなかったことを、心の底でずっと気にしている穂村さん。「ミック・ジャガー、かっこいいなあ」と思いつつ、「一体、どこが自分と違うんだろう」と考えて、何もかもがあまりにも違いすぎることを知って呆然とするしかない穂村さん。食べ物屋のカウンターに腰かけている「常連」と思しき人たちが発散する雰囲気が苦手で、ひとりで店に入っても自然、テーブル席に足が向いてしまう穂村さん。
著者の穂村さんが漏らす本音、もっと自信を持って行動したいんだけどそうできない告白に、「あるある、そういうことって」と妙に親近感を抱きつつも、あちらでくすり、こちらでにやりとさせられたエッセイの数々。自分と重なる部分や共感できるところが結構あったりして、「うーん、これってどうなんだろう」「もしかして、やばいのでは」なんて思ったんですけどね(笑) でも、すいすい気軽に読めて、面白かったです。
インパクトがあって特に印象に残ったエッセイは、次の三つ。
◎穂村さんと何人かで夜、ごはんを食べている時に、今までの人生で一番こわかった体験を披露し合う・・・・・・『愛の暴走族』
◎穂村さんが買った一枚のクリスマスカード。その裏側に記されていた結びの言葉にしんみりさせられた・・・・・・『ベティによろしく』
◎穂村さんが目撃した近所の公園での出来事に、読み手の私も思わず、「おおっ、ええ話やあ」と声が出そうになった・・・・・・『キスの重み』
2005年6月、集英社より刊行された単行本を文庫化したもの。巻末解説は、三浦しをん。