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戦争の悲惨さを訴えたり,戦争を非難したり,あるいは何かの美談を伝えるような本ではありません.「本当の戦争の話というのはぜんぜん教訓的ではない.それは人間の特性をよい方向へ導かないし,高めもしない.」「本当の戦争の話というのは,戦争についての話ではないのだ.絶対に.」とのこと.これについて,訳者の村上春樹氏が実にうまい説明をあとがきの中でしています.
「この本における戦争とは,あるいはいささか極端な言い方かもしれないけれど,ひとつの比喩的な装置である.それは極めて効率的に,きわめて狡猾に,人を傷つけ狂わせる装置??ある.それがオブライエンにとってはたまたま戦争であったのだ.そう言う文脈で言うなら,人は誰でも自分の中に自分なりの戦争を抱えている.そしてある意味では誰もが本当の戦争の話を語れるはずなのだ.だから本当の戦争の話とは戦争についての話ではないのだ.」
著者は,我々の中に内在しているその「装置」について語ろうとしていて,その説明のための例として自分自身が赴いたベトナム戦争を引き合いに出しています.その「装置」がどういうトリガーでどのように作動するか,そしてその「装置」がどのように人間を傷つけ,壊していくのかを説明しようとしています.ベトナム戦争体験記のようなノンフィクションより,このフィクション短編集の方がずっと読後感が重いし,暗い気持ちになってきます.これは著者が戦争という具象物を紹介・説明しているのではなく,それを抽象化して誰もが内部に持っているものを捉えようとしているからかもしれません.
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