前作「あなたの声を聴きたい」に出てくる向井晴臣のお話です。
晴臣は高校時代に同姓と付き合っていることが家族にバレてしまい、無理やり引き裂かれる。
家族とも縁を切られた晴臣は、その後相手の家族が崩壊してしまったことを知って責任を感じ、
大人になった今では付き合ってもずっと一緒にはいられないと、本気で人を好きになれなくなっていた。
そんな時、大学時代の同級生・篠倉司と偶然再会する。篠倉は晴臣がゲイだと知っていても
家族に紹介してくれ、家族ぐるみの付き合いに晴臣の心も和み始めるようになり、篠倉と過ごす時間が
次第に多くなっていく。そんなある日、トラブルが重なり八つ当たり気味に篠倉を誘って
体の関係を持ってしまう。その後も態度を変えず、自分の事を好きだといってきた篠倉と
過ごすのは心地よく、自分も篠倉に惹かれているのだと知る。でも自分のせいで
また同じように一つの家族を壊したくない・・・という過去のトラウマから
晴臣は篠倉から離れようとして―・・・。
この後に、元彼が押しかけてきたり弟が理不尽な理由で家まで来たりと、晴臣が頑張れば
頑張るほど様々なことが起こるんだけど、何があっても態度を変えず、ある意味ストーカーっぽい
篠倉の粘り勝ちでハッピーエンドに。
よくある展開なのに感動できるのは、ひとえに椎崎さんという良い書き手によるものだと思う。
感情の描写が緻密でついつい入り込んでしまいます。過去の罪悪感を引きずったままの晴臣が
最後の最後で「好きな人の手を取っても自分はもう許されるだろうか」と思うシーンに、
幸せになっていいんだよ!と胸にグッときてしまいました。大人のふりを一生懸命にする
不器用で弱い晴臣にドップリとはまる一冊でした。