「本当に明日から使える漢方薬」という名前から気楽に購入したが驚いた.
嬉しい方に見事に期待が裏切られた.
漢方薬の入門書をこれまで何冊か購入し気血水や六病位など勉強し,中医学にも興味を持ったが独学には限界を感じた.
富山大学の和漢診療部の短期エクスターンに参加したが,臨床医が漢方薬を処方するのに必要なのは問診と舌診,そして腹診であることがわかった.
近頃は特に中医学の本が多くなり,中医学ブームである.
しかし私の独断であるが,あれは普通の臨床医が初めから学ぶものではない.
腹診を重視する『日本漢方』,つまり和漢こそ最初に学ぶ第一歩である.
そう感じていた私にとって,この本はまさに目から鱗が落ちる素晴らしいものであった.
凡才の私には残念ながら一日一時間の7日間で速習という訳にはいかなかったが,一気に読み通し満足感で一杯になった.
純然たる漢方一筋の漢方医からみたら随分と挑戦的でふざけた本だと映るだろう.しかし,保険診療で漢方薬を実際に処方している医師の殆どは純粋な漢方医ではない.内科,外科,小児科,婦人科,耳鼻科,眼科,皮膚科などの医師である.そんな医師達にとっては,この本の存在は大きい.
薄い本だが中身は濃く,また切り口が斬新でわかりやすい.外科の先生だけあって,文章や話の流れがスッキリしている.そして中医学ではなくまず日本漢方を学ぶことが大事ということも記載してある.腹診についてもすっきりと要領を得てまとめられている.
しかも推薦の言葉は現在の日本漢方の大家である松田先生が書かれ,大御所の大塚先生のコメントなども随所にちりばめられている.色々な意味で肝を押さえてある本である.
私は,こうした著者だからこそ,傷寒論や金匱要略などの古典を現代風に意訳したものを今後執筆してほしいと切に願っている.