1冊の本を徹底的に読みつくすための実践書。次のような人に特におすすめ。
・難解な本,専門的な本を読みたいが,途中で挫折してしまう
・上記のような本を読むには読んだが,内容をよく思い出せない
・出来るだけ沢山の本を読みたい
ただし,以下に当てはまる人は,必ずしも本書を読まなくても良いかもしれない。
1. 読む本はもっぱら,漫画や小説,ビジネス書である
2. すでに読書法について書かれたハウツー本を読んでおり,実際に役立てている
1. について説明すると,本書は文学作品の読み方にもページを若干割いているが(第3部),どちらかと言えばノンフィクションの読み方に重点を置いている。また,小説や物語の読み方が分からないという人もあまりいないだろう。ビジネス書についても同様である。
2. については,本書が読書法の古典であると述べたことに関係している。「古典」とは,ひと昔(あるいはもっと)前に書かれた本で,その存在は誰もが知っている(べき)ものだが,実際に読んだ者は意外と少なく,にもかかわらずその知見が我々の社会に確実に影響を及ぼしている,というほどの意味だ。つまり,世の中に「本の読み方」を説いた本は数多あるが,そこで紹介されているテクニックは,源流をたどれば『本を読む本』に行き着くと言っても過言ではない。
たとえば,本書では「目次や索引に目を通して本の全体像を把握する」ことが点検読書の手順として述べられている(pp.40-44)。これはあちこちで言われていることで,知っている人も多いと思う。また『
「読む」技術』という本の第4章では,文章の要点をとらえる方法を述べており,そこでは日本語の特性に着目したテクニックが紹介されている(『「読む」技術』pp.78-80)。要点をつかむ方法は,『本を読む本』では分析読書の第2段階(本書第9章)で求められる手順の1つだが,『「読む」技術』はそれを日本語文のために特化・展開したものと言える。あるいは『
新版 論理トレーニング』は,分析読書の第2段階と,第3段階(本書第10章・第11章)の具体的手順を詳述した本として位置づけることが可能だ。さらに,『
多読術』は,シントピカル読書(本書第14章)をカジュアルで身近なものに再構成しようとした試みと見なせる。ちなみにシントピカル読書とは,1つのテーマ(トピック)に関して複数の本を読み,そのテーマの理解を深める読書法のことである。具体例はこの段落で示したとおり。
だから,すでに自分の読書法を確立しているという人にとっては,本書は必ずしもすぐに買って読むべき本というわけではない。もっとも,本書はあらゆる本のあらゆる読み方について網羅的に説明しているから,読み方のバリエーションを増やすのには有益だ。
個人的に最も役立ったのは,「その本全体の統一を,2,3行か,せいぜい数行の文にあらわしてみること」(p.88)という読み方だ。これを意識することで,受動的な読書から積極的な読書に頭を切り替えられるし,全体の構成を踏まえた立体的な理解がしやすくなる。この「要約」は,唯一の正解があるわけではないが確実に巧拙はあり,続けていくと上達が見えてくる。本書は,あらゆるレベルの読者にとって,読書スキルを確実に底上げしてくれる1冊である。